「3匹の子豚」とは海外発の童話のひとつだが、この話の残虐性に夜も眠れないほどの恐怖を覚えたのは40歳を過ぎ、近所の子供から「おじさん」と声をかけられるようになって久しい頃のこと。
子供向けにアレンジされていたストーリーは、3兄弟の豚が力を合わせて狼に立ち向かい、懲らしめるというストーリーだが、これは原作とは大きく違うストーリーだ。大人たちはリアルな原作通りの描写を子供に話し聞かせるのは精神衛生上よくないと判断し、希望を見出した平和的な話に作り変えたのだろう。
しかし、そんな子供に聞かせられないようなストーリーを、態々アレンジしてまで教え伝えたい事とは一体なんだったのだろう…。当時の大人たちの心理が、オサーンになった今の私でも思い当たらない。もっとステキなお話は古今東西いくらでもあるだろうに───。
ストーリーを思い返してみた。
アレンジを効かせたストーリでは、長男豚は藁の家を服飛ばされ、次男豚の家に逃げ込む。木枝で作られた次男豚の家は長男豚の家と比べるとやや強度はあったが、それでも狼の突進で粉々に砕かれてしまう。2匹は三男豚の家に逃げ込む。三男豚は長男と次男豚が家を完成させて楽しく遊んでいる時も地道に煉瓦を組み上げ、時間をかけて家を築いていた。その甲斐あって狼はまったく手が出せなかった。それでも狼は、なんとか豚を食べようと煙突から家の中に侵入を試みるが、そこにはグツグツと煮だった鍋が!そこに落ちた狼は大目玉を食らい、豚の三兄弟は力を合わせて狼を懲らしめた───。というハナシ。
しかし、原作では長男・次男豚共に生き残っていない。生き残ったのは三男豚だけ───。長男・次男豚は、家を破壊された流れで狼に食べられる。子供用にアレンジされたフィルターを外すとまるでスティーブン・キング脚本/スタンリー・キューブリック監督作品「シャイニング」を連想させるような恐怖とグロテスクな話に生まれ変わる。