情報先行型の落とし穴

40オーバーオサーンリーマンの若かりし頃、俗にいう”青春”時代にブームになった「バンドブーム」。土曜日の深夜は「イカ天」を見るのがデフォルトだった。そんなブームもあってか、私も例にもれず「ギター少年」だった。バイトにバイトを重ね、溜めたお金で手に入れたレスポールの音は格別だった。

オサーンになり、社会はインターネットという情報網が張り巡らされた。欲しい情報は意図も簡単に手に入れられる時代になり、ギターもピンからキリまでの情報が簡単に手に入った。当時の私のレスポールも、そのブランドや歴史、価格帯など、時代を遡りその情報は容易に入手することができた。その情報は廉価版を意味していたが、それよりも25年程前に入手したレスポールを今だ記憶しており検索することができたことは「物覚えの悪い優秀な私」にとって奇跡的───。

しかし、格別なサウンドを披露してくれたレスポールは廉価版だったなんて、ちとショック…。とはいえ当時のバイト代で購入できる程度のギターなんだからそんなもんだろ。ナーン。

しかし、それを知ったことで格別だと思っていたそのサウンド感が一気に色あせた。「安物」というだけでその価値が半減以下に落ち込むなんて、どうしようもない現金主義のツマラン・リーマンだ。「安かろう悪かろう」が擦り込まれたオサーンに物の価値は解らない───。

それを指摘され「ナニクソ!」と息巻くオサーン。こんなレッテルを払拭すべく楽器屋さんへ足を向けた(自分への挑戦は鼻息荒く実行するヒマジン・オサーン。)

ギターの試し引きを依頼し、店舗に飾られたいくつかのギターを準備してもらう。シールドを接続するアンプはやっぱり「マーシャル」─── 。ほどほどのボリュームで、GAINを最大───。左手はAmをハーフタッチで押さえ、ギター側のボリュームダイヤルを最大まで回転させる。硬度ミディアムのピックを持つ手を振り下し、カッティング気味に音の歪(ヒズミ)と音量を確認する───。

右手人差し指の爪が6弦に引っかかり割れた。左手の小指も1弦が食い込んで切れそう。ワンストローク目で受けたダメージで、マーシャルは一音も空気を振動させることなく電源がOFFされた。軽い会釈だけでそそくさと立ち去る情報に溺れたオサーンの休日───。

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